「なぜ」がすべての始まり

2011年、東日本大震災。そのときに感じた無力感と、あるシンプルな疑問が、
私たちの出発点になりました。震災発生直後の混乱した状況の中で、当時の首相が
「現場で何が起こっているのかわからない」と苛立ち混じりに言っているのをテレビで見たとき、
率直に思ったのは「なぜ監視カメラを見ないんだろう?」ということでした。
無数の監視カメラをネットワークでつないで確認すれば、
事態をもっと把握できるはずだと。

しかしその一見簡単そうな仕組みでさえ、これまでは実現が困難でした。
大容量の動画データを遠隔地に送る、フォーマットの違う多量のデータをひとまとめにして扱う。
そのためには、とてつもなく高度な技術と
莫大なコストが必要だったのです。

被災地から離れたところにいて、状況がわからず、思うように動けず、
ただもどかしさだけを抱えながら過ごしていたのは、
大企業も行政も研究機関も、誰もが同じでした。
「仕組みがない」という、それだけのことでどうすることもできない。

「なぜ、あたりまえのことが簡単にできない世の中なんだろう」

この問いが、創業の原点です。膨大なデータと多種多様なデバイスがただバラバラに
存在するだけの世界を変えるために、私たちの挑戦が動き始めました。

この世界を成り立たせているもの

「産業の米」という言葉があります。産業全体の基盤となり、幅広い分野で利用され、
社会と暮らしに必要不可欠な製品や技術を、農業における「米」になぞらえた比喩表現です。
古くは石炭、鉄鋼、そして20世紀の終わりには半導体が「産業の米」でした。

その「米」をつくるためには、さらに根源的な要素が必要です。
「水」であり、「土」であり、「空気」であり、「日光」。
この世界にありふれていて、普段は気に留められもしませんが、
確実にあらゆるものを成り立たせている存在。

そんな一見、個性も、違いもなく、また飛び抜けた要素もない、ありふれた価値こそが、
実際には圧倒的な「力」や「可能性」としてこの世界を支えているのではないか。

そう私たちは考えています。
そして構築し、実装しているのです、その汎用的な「力」を。

ソリューションモデルそのものの転換

あらゆるデータと情報をインプットし、確かな精度と速度でストレスと遅滞なく解析し、
いかなるカスタマイズにも対応したアウトプットを提供する。
このシンプルで、しかし具現化するには多くの困難を伴うプラットフォームの実現が、
私たちのミッションです。

ネットワーク社会が進展し、IoTが確実に生活の中に浸透している現代では、
ITに求められるニーズは劇的に多様化しています。個別課題を一つずつ潰していく
これまでのソリューションモデルでは、もはや追いつかないところまで
状況は進んでいるのです。

加えて、あらゆる分野において人材の不足が社会全体を覆う
ベース課題となっており、多様化するニーズに追いつくのはなおさら困難。
さまざまな業務の効率化・自動化は急務中の急務と言えます。

そこで必要となるのが、ソリューションモデルそのものの転換です。個別課題への
当座的な対応からセンサーやカメラ等の違いを吸収した汎用システムへ。

何よりも汎用的であることが、これからの世界では最大の価値であり、
最強の差別化要因となるのです。
私たちのプラットフォームは、まさになるべくして生み出されるものです。

テクノロジーの恩恵を
誰もが享受できる社会へ

私たちが汎用的なプラットフォームの開発を志した背景には、
「テクノロジーの恩恵は誰もが等しく受けられるべき」という想いがあります。
目覚ましい発展を遂げるAIやIoTをはじめとしたITの進化は、
現実には多くの“取り残された人々や地域”を生み出しながら進んできました。

その一方で、テクノロジーがもたらすメリットが過剰に集中する大都市部では、
人々が恩恵を独占的に享受しているように見えて、
実は一人ひとりが過度のストレスにさらされ疲弊しきっているのです。

この矛盾。それぞれちぐはぐで何かうまく回っていない状況。それを改善し、
もっといい社会にできないか。そんな問題意識が、私たちを突き動かしています。
情報とテクノロジーの格差を是正し、ITを使われるべきところに使う。
そのシンプルな仕組みをつくり上げるために、
より汎用的なプラットフォームは欠くことのできないものなのです。

究極の未来を実装するプラットフォーム

私たちのプラットフォームによって、何が実現するのか。
その問いには大きく三つの答えがあります。

一つ目は
「IoTの全面化」。

現状はまだバラバラに存在しているだけの多種多様なデバイス、センサー、
ロボットなどが、“多拠点間で”“リアルタイム性を確保しながら”
“一元管理によって”つながる社会が到来します。

二つ目は
「タイムマシーンをつくること」。

あらゆるデータをAIが解析・学習することで、今起きていることから未来を予測する
ことがもっと簡単かつ高精度になります。防災、防犯、交通、消費、医療など、
さまざまな分野でデータが事後対応ではなく予防と準備に活かされ、
一歩先の未来を先取りすることが世の中のスタンダードになります。

そして三つ目が
「機械の存在すら意識しなくなる世界」。

さまざまなサービスに介在するマシンやシステム、テクノロジーが目立たなくなるほどベ
ーシックなプラットフォームを構築することが、その恩恵を誰もが享受できる
社会の実現につながります。人生100年時代の中で、子どもから高齢者まで誰もが
最先端の技術を使いこなせる、さらには使っている”意識すらないようになることこそ、
ある意味究極の姿と言えるでしょう。

すべての基盤となるプラットフォームを構築・実装する。私たちが形にするのは、
何にでもなれて、どんなものでも収容でき、あらゆる色に染まれる
汎用的な「可能性」であり、最も根源的な「力」なのです。

そう、一見何の変哲もない「水」や「空気」のように。